“道づくり”と風土工学
 
 竹林 征三

富士常葉大学 環境防災学部 教授

同大学附属 風土工学研究所 所長

これからの“地域づくり”の実学として新たに

「風土工学理論」の体系を構築し、その普及啓発につとめている。

受賞・科学技術庁長官賞

第一回科学技術普及啓発功績者

  ・前田工学賞・第五回優秀博士論文賞

  ・建設大臣研究業績表彰

  ・北上市「鬼の舘」創作民話・最優秀賞

  ・国土交通大臣建設功労表彰

著書「風土工学序説」「風土工学への招待」

  「湖水の文化史」「職人と匠」

  「東洋の知恵の環境学」「続ダムのはなし」

  「景観十年・風景百年・風土千年」

  「実務者のための建設環境技術」他多数


1〕はじめに

人に個性があるように、地域にも強烈な個性がある。人にプライドがあるうに、地域にもプライドがある。しかし、地域の個性は、しばしば隠れている場合が多い。また、地域のプライドは、しばしば傷つけられ泣いている。

感性を磨き、地域の歴史や風土・文化などをよく知れば、隠れているものが見えてくるし、プライドの悲痛な叫びが聞こえてくる。感性を磨けば磨くほど、地域の歴史や風土・文化を知れば知るほど、その度合いに応じて地域の個性がより輝いていることがわかるから不思議である。


2〕「みち」とは

 (1)「みち」とは

 (2)「道」ち「導」

 (3)「道」と「術」

 (4)「みち」は「美知」なり

   「みち」は「未知」なり

 (5)未知の世界・テラインコグニタ

3〕道と風土

 (1)道の先導者「八咫烏(やたからす)」と「猿田彦」

 (2)方帝と四神と八風、「鳳」と「風」

 (3)八風が治定する風土

4〕自然になじむ山岳道路

1)切盛技刺 大地しずめの心

2)動く大地・活断層への礼儀

3)土工五訓

4)自己復元緑化工法の思想

5〕景観十年、景観百年、風土千年

1)環境と風土のアナロジー

2)景観十年、風景百年、風土千年

2-1)変化対応と本物順応

2-2)景観と風景と風土の概念


6〕マズロー欲求五段階説と今道路に求められているもの

1)マズロー欲求五段階説

 (2)ものづくり五段階説と感性工学

 (3)地域づくり五段階説と風土工学

 (4)土木工学から環境工学そして風土工学へ

7〕道路建設「男性原理」

1)男らしさ、女らしさ

2)地物のイメージ

3)感性評価と風土分析

4)地域によるイメージの差異

5)陰陽五行説

8〕風土工学とは

 (1)風土の“四つの窓”と四窓分析

 (2)地域づくりのアクションプラン

 (3)風土工学・意味空間の演出

9〕道の駅「雫石あねっこ」と風土工学

 (1)風土調査、風土イメージ連想アンケート

 (2)風土分析・四窓分析そしてデザインプロセスとコンセプト

 (3)「雫石あねっこ7話」の創作

 (4)風土工学、デザイン基調の調査

 (5)風土工学意味空間のデザイン展開

10〕風土工学の思い

 夢のある未来に向けて

“夢の結実に向けて”夢のない人生はつまらない。

同じように、夢のない地域はつまらない。

このふるさとの風土にどれだけ夢を生み出す人がいるか。

夢を見つけ出す人がいるか。

それが、この地の将来の明暗を分ける大きな指標の一つである。智慧と熱き思いは夢を現実にする力を持っている。智慧は夢の中で種子が生まれきて熱き思いの中で大きく育まれる。個の発想より夢は生まれ、郡の想像にて夢の結実に向かう。夢の実現に向けて、大切なことは熱き思いの過程であり、結果ではない。